映画『ヒトラーに屈しなかった国王』

 

 リッカルド・ムーティ― →ウィーン・フィルの負の歴史→ の流れで、年末から気になっていた映画『ヒトラーに屈しなかった国王』を見に行った。

 

 恥ずかしながら、このホーコン7世(1872-1957)という、ノルウェーの初代国王のこと、私は全然知りませんでした。

 

「私は歴史上初めて、国民に選ばれた国王である。」

 というセリフが実に新鮮で、自分は日本人だなあと、実感したことでした。

 

 ホーコン7世は、デンマーク国王フレゼリク8世の次男で、兄はデンマーク国王クリスチャン10世。

 1905年、ノルウェーがスウェーデンとの同君連合を解消した時に、国民投票で選ばれてノルウェー国王として即位した。

 息子はオラフ5世、孫は現ノルウェー国王のハーラル5世である。

 

 ホーコン7世は、八甲田山の遭難死亡事故(高倉健の映画で、大学生の時、見ました!)の時、そのお見舞いとして1909年に、明治天皇にスキー板を贈ったそうな。

(なぜ、スキー板?わかるような、わからぬような)

 

 

 まあ、それをきっかけにして日本とノルウェーとのスキー交流が始まったというのだから、北朝鮮のオリンピック参加も、ひょっとすれば ”瓢箪から駒” がないとも限りませんねえ。

 

 1940年4月9日、ナチスドイツはノルウェーの首都・オスローに侵攻。むろん応戦はしたものの圧倒的な軍事力で各都市は次々に占領されていく。

 ホーコン7世は閣僚を引きつれて首都を離れる。

 

 ヒトラーの要求を拒む国王とヒトラーとの間に立って職務を全うしようとするドイツ公使の姿が、私にはこの映画の中で一番印象に残った。

 

 この公使、いらいらして思わず妻をひっぱたいちゃうんだよなあ。

 でも、出て行くと言って荷作りする妻を止める暇もなく、交渉に向かう公使が、とてもナチスの手先とは思えぬほど格好良かったんですよ。

 

 だから、交渉に失敗して戻って来た時、妻が部屋にいて、思わず涙!

(いや、泣くのはそこじゃないのはわかってるけどね。)

 

 私に国王の素質がないのは百も承知なのだが、ヒトラーが降伏を求めて来た時、要求を飲めば国民は傷つかない。応戦すれば目の前の若者がバタバタと死ぬ。そんな選択で、要求を拒否して自分はイギリスに逃れて徹底抗戦を指示するなんていう度胸はさすがに国王の器量というか、度量はすごいものだねえ。

 

 今なら、”ヒトラーに屈しなかった国王”としてノルウェー人の誇りだということはわかるが、当時の国民もやはりそのことを素直に誇れたのだろうか。

 

 人の記憶は塗りかえが可能なので、私にはタイトル通りに受け取ることはできなかった。わかるのはディテイルだけ。

 ドイツ大使の妻が、部屋にいて…それで泣く。…これが限界でありました。